Googleのビジネスモデルに学ぶユーザーファースト戦略

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ここ数年で「ユーザーファースト」という言葉を耳にするようになりました。
Yahoo!やクックパッドなど、ユーザーファーストを掲げる企業も増えてきています。

Webマーケティングで成功するかどうかは「ユーザーのことをどれだけ考えられるか」によって決まると言っても過言ではないでしょう。

ところで、スタートアップから一貫してユーザーファーストを実践している企業があります。
それがGoogleです。

そこで今回は、Googleのビジネスモデルからユーザーファーストについて考えてみたいと思います。

ユーザーファーストとは

ユーザーファーストとは、 ユーザー第一主義、ユーザー優先主義という意味です。

マーケティングや経営の戦略、 商品・サービス、Webサイトのデザインや使い勝手など、様々な範囲でユーザー目線を取り入れて、意思決定やアクションを起こしていく考え方です。

顧客第一主義も同じような意味合いで、厳密に言葉を区別をする必要はないと思います。
今の時代の消費者はインターネットデバイスを持ち頻繁に利用していること、ネット上の行動とリアルでの行動が互いに深く影響し合っていることを考えると、ユーザーファーストという言葉の方が捉えやすいのではないでしょうか。

注意すべきなのは、「ユーザーのことを第一に考えること」は、「ユーザーの言うことを何でも聞く」とか「お客様は神様」と捉えることではない、ということです。

人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ。

スティーブ・ジョブ全発言 世界を動かした142の言葉』より

例えば、「顧客の要望に応えて商品を改良したら不評だった」なんて話を聞きますが、なぜそんなことが起こるのかというと、ユーザーは自分が求めているものがどんなものなのかはわからないからです。

消費者は、完成されているものやサービスについて批評することはできても、完成する前の段階のものを具体的にイメージすることはできません。

なので、たとえユーザー自身が気付いていないようなことでも「ユーザーにとって本当に良いことは何なのか?」を率先して考えることが、真のユーザーファーストに繋がります。

なぜユーザーファーストが重要なのか

結論を言うと、現代は「消費者優位の時代だから」です。
その大きな要因が、インターネット文化の成長です。
インターネットの登場によって消費者は「情報」という武器を手に入れました。

以前とは比べ物にならないほど、商品やサービス、あるいは、それを売っている企業や会社に関する情報を手に入れることができるようになりましたよね。

  • 競合と類似する商品のスペックを比較する
  • 会社や商品の評判・口コミを調べる
  • ブログやYouTubeでレビューを見る
  • SNSで話題にする

ネットに繋がれば、これらのことは簡単にできてしまいます。
売り手側に都合の良い情報だけを流すような情報操作は、もはや不可能です。
反面、ユーザーが満足してくれれば、その体験をシェアしてくれる文化でもあります。

真にユーザーのことを第一に考えていれば、それは巡り巡って自社の利益にも繋がっていくわけですね。

Googleの検索エンジンはユーザーファーストで始まっている

完璧な検索エンジンとは、ユーザーの意図を正確に把握し、ユーザーのニーズにぴったり一致するものを返すエンジンである。

Google がユーザーのためにしていること – Googleのサービス』より

「検索ユーザーはそのワードで何を知りたいのか?」という検索の意図を汲み取って、最適な検索結果が表示されるように、常に研究してアルゴリズムを改善しています。

当然ですが、検索ランキングが、どこかの企業や団体の利益に優位に働くように操作することはありませんし、もしそれが発覚すれば、Googleの信頼は一気に地に落ちることになります。

Googleの検索エンジンが優れている理由は「ユーザー=自分が使いたいと思う検索エンジン」を常に追求しているからです。

過去を振り返ってみても、 たくさんの便利な検索機能が提供されてきましたね。

  • 関連語句の表示
  • 入力中の検索ワード候補(サジェスト機能)
  • 『もしかして〇〇?』の表示
  • 天気予報、映画の上映時間、郵便追跡など生活に密着した情報検索
  • ニュース速報のタイムリーな検索結果
  • 画像、動画などの種類検索
  • 周辺地域のお店情報やマップ表示
  • 著名人、組織、施設などの情報表示(ナレッジグラフ)
  • 音声認識による検索 etc…

検索エンジンの使い勝手はどんどん良くなっていますし、その恩恵は私たちユーザーが受けていますね。

Googleのビジネスモデルに学ぶユーザーファースト

Googleの売上の約9割が広告収入によるものです。
検索エンジンの検索ワードと連動して関連性のある広告を表示させるAdWords広告や、WebサイトやYouTube動画などに設置された広告枠に表示させるAdSence広告があります。

Googleの広告サービスから垣間見えるユーザーファーストの視点を考えてみましょう。
今となっては当たり前と感じるかもしれませんが、いざビジネスをする側となって考えれば、参考になることがきっとあると思います。

広告は必要とするユーザーには有益なコンテンツ

検索結果ページには、その内容と関連性のない広告の掲載は認めません。

Google が掲げる 10 の事実』より

広告と聞くとネガティブな感情を抱く人もいることでしょう。
マス広告が典型的ですが、不特定多数に向けてシャワーのように浴びせる広告をよく目にします。必要のない広告を半ば強制的に見せられるからこそ、広告に対して嫌悪感を持つ人も増えます。

しかし本来、広告はその情報を探している人にとっては有用なものです。

オーディオを買いたい人であれば、オーディオの広告を主体的に見てくれるでしょう。
スーパーの特売チラシは、賢く生活費を節約したい主婦にはありがたい情報です。

ユーザーに必要性があれば、広告は有益なコンテンツになるわけですね。

とは言え、Googleは当初から広告による収益を目論んで検索エンジンを開発していたわけではありません。単純に自分たちが便利だと思う検索エンジンを開発していました。

むしろ、広告を表示させることは、検索結果にノイズが入ってしまうとさえ考えていました。

検索エンジンの収益化に頭を悩ませていた時、検索ワードに連動して関連性のある広告を表示させる方法に目をつけ、この問題をクリアしました。

Google共同創始者のサーゲイ・ブリンの言葉です。

ユーザーにとって真の意味で役に立ち、Googleのサイトのマイナスにならない広告を載せるということ。それが実現できれば、人々がGoogleのサイトを見かぎって離れてしまうこともないし、同時に利益も出せる。

Google Boys グーグルをつくった男たちが「10年後」を教えてくれる』より

広告がユーザーの利便性を損ねてはならない

Google が掲載する広告には、スポンサーによる広告リンク(スポンサーリンク)であることを必ず明記しているため、検索結果の完全性が損なわれません。

Google が掲げる 10 の事実』より

AdWords広告を見ると、検索結果と同じように三行広告のようなテキスト広告が表示されます。
これは、広告ではない自然検索の表示と似た表示のされ方です。

AdWords広告の例

例えば、広告だからと言って画像を使った派手な広告を採用するなど、明らさまに表示を変えてしまうと、検索画面上でのノイズとなってしまいます。

逆に、自然検索のテキストと区別がつかなければ、ユーザーの知らぬ間に広告に誘導してしまうことになります。

どちらにしても、検索エンジンとしての品質低下を招いてしまいますね。

ですので、広告であることは明記して区別をしたうえで、なるべく全体に違和感のないように広告を表示させています。

AdSense広告では、Webサイトの運営者が広告枠を設置することで広告を表示できるようにしています。だからと言って、完全に自由に設置できるのかと言うとそうではありません。

AdSenceを掲載するにはガイドラインに沿って運用しないと、広告が停止にされてしまいます。

あるいは、コンテンツより広告が多かったり、ファーストビューで広告表示が多いと、検索順位のランキングが下がることがあります。自然検索のアルゴリズム側からも、広告に対する監視を行っているのですね。

このように、ユーザーの利便性が損なわれることにGoogleは注意を払っています。

普通に考えれば、広告をたくさん表示させて、より多くクリックしてもらえれば、それだけGoogleは儲かります。

AdSenseの場合、広告を設置するのはWebサイトのオーナーなので、サイト内でどう設置しようがGoogleの問題では無いと考えられるかもしれません。

しかし、ユーザーにとってはそんなことは関係ありません。
Googleだろうが個別のWebサイトだろうが、不快なものは不快です。

広告の仕組みを提供するだけで「利用はそれぞれのパートナーに任せる」では、Googleの信用度にも傷がついてしまいます。

全ての検索結果で広告が表示されるわけではない

AdWords広告で収入を得るチャンスは、検索結果の表示の回数だけ存在しますから、全ての画面で表示させれば、最も利益を上げることができます。

しかし実際には、広告は全ての検索結果の画面で表示されません。

AdWords広告のない検索結果の画面

ユーザーの検索の意図から、広告を表示させることが相応しくないと判断した場合、Googleは広告を表示しないのです。

ユーザーの支持を得る広告ほど優遇される

検索連動型広告は、オークション方式の広告です。原則としては、クリック当りの単価を高く入札するほど高い順位で掲載されます。

しかし実際はそう単純な計算ではなく、いくつかの指標からスコアリングして掲載順位を決定しています。

中でも重要なのが、広告のクリック率です。広告のクリック率が高いと、それだけユーザーに支持されている広告と考え、広告の掲載順位が上がります。

クリック率が高いと、クリック単価も下がる計算になるので、広告の出稿者も広告費を抑えられるメリットがあります。

Googleからすれば「本来ならもっと得られる利益」を捨てているとも考えられますね。

だって、広告費をたくさん投入してくれて自社を潤わせてくれる取引先ほど、良い条件でプロモーションをするのが広告の常識ですから。

しかしこれでは、ユーザーファーストではなく、クライアントファーストになってしまいます。

お金を払っている広告主からすれば、少々納得のいかない部分もあるかもしれませんが、「ユーザーからの支持」という上手い仕組みを取り入れることで、「ユーザーが求める情報を提供する」という検索エンジンの本来の目的を損なわずに済みます。

それに、ユーザーから広告が支持されれば、最終的には広告主にとってもプラスに働きますよね。広告のパフォーマンスが下がれば費用対効果が悪くなるので、広告主も改善を余儀なくされます。

Googleはこの仕組みを提供することで、結果的には広告コンテンツの品質をもある程度コントロールしていると言えるかもしれません。

ユーザーファーストで考えよう

ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。

Google は、当初からユーザーの利便性を第一に考えています。新しいウェブブラウザを開発するときも、トップページの外観に手を加えるときも、Google内部の目標や収益ではなく、ユーザーを最も重視してきました。

Google が掲げる 10 の事実』より

2016年末頃に、医療情報を扱うキュレーションメディアの問題が社会問題化しましたね。

これは、検索順位を上げる目的、つまり、情報の信頼性や有益性よりも、アクセスを集めて広告収入を得るという、行き過ぎた利益優先 が招いた問題でもあります。
言うならば、SEOファースト、Googleファーストです。

そして、SNSで瞬く間に拡散されていき、マスコミにも取り上げられてしまいました。

こういった問題からもわかるように、現代はユーザーに主導権があり、消費者に不利益をもたらすビジネスは長く続きません。

これまでのやり方をガラッと変えることは難しいこともあるかもしれませんが、少しずつでも、ユーザーファーストの戦略にシフトしていくべきですね。

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